「物語の中の誰かになりきって会話する」という意味で、TRPG(テーブルトークRPG)とマーダーミステリーはよく並べて語られます。
どちらも、参加者がキャラクターを演じながらストーリーを進めていく体験ですが、その構造と目的はかなり違います。
物語や世界そのものをプレイヤーとGMで一緒に作っていく遊び
用意された事件とドラマの中に飛び込んで体験する遊び
この記事では、TRPG経験者の視点から両者の違いを整理し、「TRPGをやっている人がマーダーミステリーをどう使うといいのか」まで踏み込んで解説します。
TRPGとは?
TRPG(テーブルトークRPG)は、会話と想像力を使って物語を進めていくロールプレイングゲームです。
プレイヤーは自分のキャラクターを作り、そのキャラクターとして発言し、行動を決めていきます。
ゲームマスター(GM)は世界やNPCを担当し、ルールに沿って結果を裁定します。
典型的なTRPGでは、次のような特徴があります。
- キャラクターはプレイヤーが自分で作る(能力値、職業、背景など)
- ダイスやルールブックを使って、行動の成否やダメージなどを決める
- シナリオは単発もあるが、キャンペーンとして長期的に続くことも多い
- 同じシナリオでも、卓ごとに展開が大きく変わる
TRPGの一番の魅力は「自由度」です。
プレイヤーの選択次第で、物語は簡単に破綻もするし、想定外の方向に膨らみもします。
良くも悪くも、「何が起こるか分からない」という混沌をみんなで楽しむ遊びになっています。
その反面、以下のハードルもあります。
- GMの準備負担が重い
- セッション時間が長くなりがち(数時間〜)
- キャンペーンだとスケジュール調整が難しい
ここが、短時間完結のマーダーミステリーと対照的な部分です。
マーダーミステリーとは?
(TRPG視点のざっくり説明)
マーダーミステリーは、「一度きりの事件」をテーマにした会話劇型の推理ゲームです。
プレイヤーそれぞれに、あらかじめ設定されたキャラクターシート(秘密や目的が書かれた台本のようなもの)が配られます。
そのキャラクターとして行動・発言しながら、事件の真相や自分の目的達成を目指します。
TRPGと比べたときのイメージはこんな感じです。
- キャラクターは「最初から作り込まれた役」をもらう
(自作ではなく、「ある人物の人生を2〜3時間だけ借りる」感覚) - 物語は1セッション完結(だいたい2〜3時間程度)
- 同じシナリオを同じ人が2回遊ぶことは基本的にない
- 進行役はGMというより「案内役」に近い(世界を即興で作るのではなく、ルールや進行を整える役割)
- ダイスや複雑なルールはほぼなく、会話と推理が中心
TRPGに比べると、マーダーミステリーは「遊べる範囲」がきっちり枠で決められています。
その代わり、たった一度の公演のために、キャラクターや人間関係・事件構造が濃密に作り込まれているのが特徴です。
TRPGとマーダーミステリーの構造の違い
| 比較項目 | TRPG | マーダーミステリー |
|---|---|---|
| 主な目的 | 冒険・探索・成長・世界の変化など多岐にわたる | 事件の真相解明と、各キャラクターの個別目的の達成 |
| 物語のスケール | 単発から長期キャンペーンまで | 1つの事件・1つの夜にフォーカスした短期のドラマ |
| 進行役 | GM(世界と物語を「作る」側) | 進行役(ルール説明と進行がメイン) |
| 自由度 | 非常に高い。行動次第で物語がいくらでも変化 | 限定的。シナリオの枠内で可能な行動を選ぶ |
| ルール | 能力値・技能・戦闘など、数値要素が中心 | 数値要素は少なめ。会話と情報共有・投票が中心 |
| プレイ時間 | 数時間〜(キャンペーンなら数十〜数百時間もあり得る) | 1セッション2〜3時間前後で完結することが多い |
シナリオと自由度の違い
TRPGの場合
TRPGのシナリオは、「こういう前提と状況を用意したので、あとは卓ごとに好きに広げてください」という設計が多いです。
プレイヤーが想定外の行動を取れば、GMがその場で世界やNPCを足して対応します。
マーダーミステリーの場合
マーダーミステリーのシナリオは、「2〜3時間で完結する一夜限りの群像劇」として設計されています。
基本的な事件の構造とエンディングはあらかじめ決まっていて、その中をどう生きるかがプレイヤーの自由になります。
ここでの自由度は、
- 誰に何を話すか、どの情報を隠すか
- どの人と組むか、誰を疑うか、どの感情を前に出すか
という「人間関係と情報のコントロール」の自由です。
世界を好きな方向に広げるのではなく、限られた場と時間でどれだけドラマを濃くできるかを競う、という性質が強いです。
TRPG経験者がマーダーミステリーを遊ぶメリット
ここからが本題です。「TRPG勢がマーダーミステリーに手を出す意味」は何でしょうか。
TRPGでは、GMの準備やルールの説明・キャラ作成など、「遊ぶ前の手間」がどうしても重くなります。
マーダーミステリー(特に店舗公演)であれば、基本的に予約して現地に行けばすべて用意されています。
TRPGでいうところの「セッション中盤〜クライマックスのドラマ」だけを、2〜3時間で凝縮して味わえます。
キャンペーンを継続するのが難しくなった社会人TRPG卓は多いです。マーダーミステリーなら、
- その日集まれたメンバーだけで完結
- 続き物ではないので、欠席や途中参加を気にしなくていい
という利点があります。「キャンペーンの合間に一回挟む」「キャンペーンは止まっているが、顔合わせ兼ねてマダミスを遊ぶ」といった使い方ができます。
TRPGの長期キャンペーンで、露骨な裏切り者や極端に自己中心的なキャラをやると、卓の空気に大きく影響します。
マーダーミステリーは、一夜限りで解散する前提なので、
「徹底的な悪役」「嘘つき」「重い秘密を抱えたキャラクター」
といった「キャンペーンでは扱いづらいロールプレイ」を安全圏で試せます。
TRPGのロールプレイの幅を広げるトレーニングとして使うのも現実的です。
まとめ:物語を「創る」か、「体験する」か
TRPGとマーダーミステリーは、「キャラクターになりきって物語の中で過ごす」という意味では同じ系統の遊びです。
違うのは、物語との距離感と責任の重さです。
- TRPG:自分たちで世界と物語を創っていく。自由だが、そのぶん準備や継続の負担も重い。
- マーダーミステリー:用意された一夜のドラマに飛び込む。枠は狭いが、その中身は非常に濃い。
どちらが上という話ではなく、
「今日はがっつり世界を作りたいか(TRPG)」
「今日は短時間で濃いドラマを浴びたいか(マーダーミステリー)」
という選択の問題です。
TRPGファンにおすすめのマーダーミステリー6選
TRPGプレイヤー、とくに「ロールプレイ好き」「キャンペーンや世界観掘りが好き」な方に刺さりやすい、ロストプロダクトの6作品をピックアップしました。
TRPGプレイヤーだからこそ楽しめるマダミスの世界へ、ぜひ飛び込んでみてください。